節水トイレなどが浄化槽の処理性能にどう影響する?
- 浄化槽
- 2021.02.05
節水型のトイレや洗濯機、シャワーなどを導入すると、単純にトイレなどからの生活雑排水の水量が減ることが予想されます。
となると、
それが浄化槽の処理性能を向上させるのか?
それとも
浄化槽の処理性能を低下させてしまうのか?
そのことについて、この論文の中で東洋大学 山崎准教授が研究しています。
節水機器の導入が浄化槽の処理性能に及ぼす影響, 山崎宏史, 東洋大学
環境に配慮が出来て、節約もできると考え、節水トイレに買い替えた方もたくさんいらっしゃるかと思います。
しかし、一方で浄化槽に流れ込む水量が減ったことで、放流水の水質が悪化し、海や河川を汚してしまうのは避けたいところです。
山崎准教授は戸建て住宅に、節水型のトイレや洗濯機、シャワーなどを設置し、その節水効果を検証しました。
下記のように、節水機器の導入前と後において嫌気好気運転※1のあり・なしを比較対象としました。
※1 エアリフト汚泥移送装置で、逆洗時の剥離汚泥を接触ばっ気槽から嫌気ろ床槽第1室へ節水機器の導入前後の一定期間循環運転した
節水機器の導入前 → 嫌気好気運転のあり・なし
節水機器の導入後 → 嫌気好気運転のあり・なし
結論から言うと、
1)節水機器の導入で、浄化槽の流入水性状が低水量高濃度に変化。
2)水量は、節水機器導入前は、282L/人・日だったが、節水機器導入後は、219L/人・日となり、比較して22%の節水効果を確認。
3)節水機器導入前の浄化槽処理水BOD濃度は、14.8mg/Lだったが、節水機器の導入で、処理水BOD濃度は21.4mg/Lへと増加。しかし、嫌気好気循環した結果、SS濃度やT-N、T-Pは低下し、BOD濃度も14.2mg/Lへと低下した。
出典:節水機器の導入が浄化槽の処理性能に及ぼす影響,土木学会論文集G(環境), 山崎宏史, 東洋大学 ,Vol.72, No7, Ⅲ_267-Ⅲ_273, 2016.
出典:節水機器の導入が浄化槽の処理性能に及ぼす影響,土木学会論文集G(環境), 山崎宏史, 東洋大学 ,Vol.72, No7, Ⅲ_267-Ⅲ_273, 2016.
4) 節水機器の導入は、浄化槽の処理水濃度を増加させるが、嫌気好気循環運転を行うことで、ブロワ空気量(消費電力)を増大させることなく、水環境への汚濁負荷量を低減することが可能。
これら、1)から4)が研究から得られた知見とのことでした。
つまり、節水機器の導入で、水量が減ったものの、汚水が高濃度になり、水質悪化を示すBOD濃度などの指標も上昇したが、嫌気好気運転によりブロワ風量を増やすことなく、汚濁負荷量を低減することが出来た。ということになります。
この研究については、一つのご家庭・一つの型式の浄化槽から排出される水質変化を調査しています。
日本全体の浄化槽は、ざっくり言うと半分が合併浄化槽、半分が単独浄化槽が設置されていて、今回は汚泥返送が可能な合併浄化槽を用いて研究をしていますが、構造が単純な単独浄化槽を設置されているご家庭で節水トイレを導入したケースになると、水質悪化や異臭が発生する可能性は高いものと考えられます。
つまり、より一層の浄化槽管理士によるメンテナンスが必要です。
実際に現場では節水機能の商品が増えたことで、水量が足りないため、管理士からブロワの風量を増やすことや薬剤投与などのご説明をお客様にする機会も増えています。
また、節水タイプのトイレは1回に流れる水量が少ないため、汚物やトイレットペーパーを押し流す力がどうしても弱くなります。トイレ内からは流せているように見えますが、排水管内を押し流すまでの水量が足りない場合もあります。コマメに水を流したり、トイレットペーパーの使用量を少し減らしてみると解決することもあるので、もしトラブルの際はお試しください。
ゴミ袋の有料化やマイ箸運動、節水型トイレなど、環境を配慮するという取り組みは、様々な掛け声のもと行われていますが、その行動が本質的にどのような影響があるのか、好循環になっているのかについては、よく考えないといけないのかもしれません。
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鹿児島市・浄化槽保守点検(清掃)業者|鹿児島市 (kagoshima.lg.jp)
鹿児島県/浄化槽の維持管理 (pref.kagoshima.jp)