外注すればいくらかかったか——初期開発費のDIY利益を算定してみた
DIY利益シリーズ ② 初期開発費編

外注すればいくらかかったか
——初期開発費のDIY利益を算定してみた

2013年から2026年までの取り組みを、市場相場と照らし合わせた記録
外注した場合の推計費用総額(市場相場ベース) 約2,607万円 2013〜2026年・22取り組み・エンジニア雇用ゼロ・外注費ゼロ
記事①で説明した通り、DIY利益にはType A(初期開発費の節約)・Type B(サブスク回避利益)・Type C(現場技能DIY利益)の3種類があります。この記事ではType A——2013年から2026年にかけて取り組んできたことを振り返り、「もし外部に発注していたら、いくらかかっていたか」を市場相場と照らし合わせて算定します。結論は冒頭の通り、22の取り組みで合計約2,607万円です。

算定の前提

この記事を書いた理由を先に説明しておきます。

私が伝えたいのは「取り組んできたことには経済的な価値がある」という視点を持つことで、経営の見え方が変わるという話です。多くの経営者が、社員や自身が積み上げてきた内製の努力を数字として評価できていないまま、「成果が出ていない」と感じているのではないかと思っています。この記事で扱うのはType A(初期開発費の節約)のみです。毎年積み上がるType B(サブスク回避利益)は記事③で、現場社員の技能に関わるType C(現場技能DIY利益)は記事④で、それぞれ解説します。この算定が、同じような立場の方にとって自社を見直す一つの参考になれば、という意図で公開しています。

【算定の前提・免責事項】

各金額は、外部専門家・ITベンダーへの外注相場を根拠とした推計値です。自社対応に要した時間コストは含めておらず、純粋に「回避できた外注費」として算定しています。実際の節約額には幅があり、発注先・仕様・時期によって異なります。

算定単価の基準:ITシステム開発 15,000円/h(システム開発会社の人月単価ベース)/士業・専門家対応 15,000円/h(社労士・行政書士の相場)


取り組み一覧と初期開発費DIY利益

ITシステム開発・インフラ構築

取り組み 概要と算定根拠 回避できた
外注費
マンホール巡視点検
タブレット連携システム
Excelマクロとタブレットと連携。現場入力→行政様式(117項目)への自動転記・写真の自動縮尺挿入・1,050件対応。現場から帰社後の転記作業をほぼゼロにした。タブレット点検システムの外注相場(複合機能)250〜500万円を参照し保守的に算定 2,500,000円
AIしのちゃん
(問い合わせ対応)
Claude API+Python/Flask+Synology Chat連携の社内AIチャットボット。マニュアルを業務別5ファイルに分割しキーワードルーティングを実装、API費用を約70〜80%削減。88h×15,000円/h 1,320,000円
AIしのちゃん
(日次クイズシステム)
曜日別4択クイズを毎朝7:30に全社員22名へ自動配信。解答後即時解説・16時に全体回答状況レポートを自動送信。ハラスメント・健康・技術の4分野対応。88h×15,000円/h 1,320,000円
IT点呼システム GitHub Pages+Google Apps Script+スプレッドシート連携。スマートフォンからのアルコール検知数値入力・顔写真送信・管理者2名分岐承認フローを自動化。道路交通法の白ナンバー点呼要件を充足。36h×15,000円/h 540,000円
Synology NAS構築・移行(3台)
+社員メール設定
DS218j(事務用・2017年)・DS220j(現場用)・DS225+(最新機)を順次導入・設定。DS218j→DS225+への355GBデータ移行・RAID構成・VPN・バックアップ三層構成・Synology Chat構築まで一貫対応。加えて全社員10名分のGmailアカウント作成・Xserver経由での自社ドメインメール設定を実施。46h×15,000円/h+メール設定10名×4,000円 730,000円
Googleマップ
顧客管理システム
3,808件の顧客・浄化槽管理先をGoogleマップ上で視覚管理。現場タブレットからのリアルタイムアクセスを実現。GIS・顧客管理システム開発相場を参照。40h×15,000円/h 600,000円
監視カメラシステム構築 BC500×3台・CC400W設置・Surveillance Station連携・遠隔監視環境構築(物理設置は業者委託・実費20万円)。12h×15,000円/h 180,000円
ExcelマクロVBA開発 集計業務を2時間→20分に短縮(約83%削減)。帳票・請求・データ処理の自動化。ExcelVBA中複雑度開発の外注相場10〜40万円を参照し保守的に算定 400,000円
自社HP内製制作・移行・運用 WordPress内製・test.arita-sangyo.co.jpでテスト環境を構築したのち旧サイトをバックアップして本番環境へ切り替え・5年以上継続更新・SEO対応。2026年リニューアル後、指名検索クリック数+700%。初期制作・移行作業・5年間保守運用代行相場で算定 2,160,000円
Instagram・SNS運用 開設後プロフィールアクセス+2,059%・リーチ+2,862%。Canvaによるビジュアル内製。初期設計+1年間の運用代行相場で算定 900,000円
LINEスタンプ制作・販売 社内キャラクター「ありたん」「しのちゃん」2キャラクター×16個×4セット。Canva+AI生成で内製・販売まで完結。売上は全額を児童養護施設へ寄付。44h×15,000円/h 660,000円
ITシステム開発・インフラ構築 小計 11,310,000円

データ入力・移行

取り組み 概要と算定根拠 回避できた
外注費
浄化槽管理システム
データ移行(ミスターアクア)
3,808行×87列(約33万セル)の顧客・点検データを内製で入力・移行。データ入力業者の一般的な相場50円/件×165,000件で算定 8,250,000円
データ入力・移行 小計 8,250,000円

認定申請・書類整備

取り組み 概要と算定根拠 回避できた
外注費
DX認定申請(IPA) DX戦略策定・補足PDF9ページ・PowerPoint・推進指標Excel・設問(1)〜(6)全対応。申請管理番号:202605AH00002270。68h×15,000円/h 1,020,000円
事業継続力強化計画
(九州経済産業局)
4リスク対策・協力企業調整・電子申請。不備ゼロで一発認定。認定番号:20240105九州第2号。28h×15,000円/h 420,000円
SECURITY ACTION 二つ星宣言(IPA) 情報セキュリティ自社診断25項目・基本方針策定・HP公表・宣言事業者登録。11h×15,000円/h 165,000円
かごしま子育て応援企業
登録申請
制度調査・様式第1号作成・添付書類整備・提出。かごしま働き方改革推進企業の前提条件を充足。12h×15,000円/h 180,000円
一般事業主行動計画
策定・届出
次世代育成支援対策推進法に基づく計画策定・鹿児島労働局届出。トライくるみん申請の基盤となる書類。24h×15,000円/h 360,000円
イクボス宣言(鹿児島県) 宣言内容検討・届出。かごしま働き方改革推進企業認定の必須前提条件を充足。6h×15,000円/h 90,000円
かごしま働き方改革推進企業
▶ 申請準備完了
要件分析・残業時間の給与データ集計・Excel作成・時間単位有給の労使協定整備・65歳以上雇用者一覧作成・書類整合性確認・提出準備まで一貫対応。30h×15,000円/h 450,000円
健康経営優良法人
▶ 申請準備完了
16項目要件確認・かごしま健康企業宣言・高齢従業員業務配慮方針Word作成・ラジオ体操実施記録Excel作成・残業申請ルール改訂・25項目ストレスチェックGoogleフォーム作成・証跡書類整備。40h×15,000円/h 600,000円
認定申請・書類整備 小計 3,285,000円

労務・規程・教育整備

取り組み 概要と算定根拠 回避できた
外注費
就業規則等 全面改定(11種類) 就業規則・賃金規程・福利厚生・退職金・雇用契約書19名・説明確認書・労使協定・ハラスメントマニュアル3点・iDeCo+規程。70h×15,000円/h 1,050,000円
UPS導入・NAS連動設定 APC BR400S-JP設置・Synology NAS 2台ネットワーク連動自動シャットダウン設定(自社にて物理設置・設定)。12h×15,000円/h 180,000円
YouTube社内教育動画ライブラリ 自社制作12本:代表と社員が実際の現場(浄化槽・マンホール・車両等)に出向き撮影・Canva編集・投稿まで内製。現場ロケ込み外注相場12万円/本で算定。キュレーション58本:研修に有用な他社動画を選定・整理・体系化(0.5h×58本×15,000円/h)。チャンネル設計・構築(8h×15,000円/h)を含む。11カテゴリ・計約70本 1,995,000円
労務・規程・教育整備 小計 3,225,000円
初期開発費DIY利益 総合計(22取り組み) 約26,070,000円
外注した場合の推計費用総額(市場相場ベース) 約2,607万円 2013〜2026年・22取り組み

この数字をどう読むか

2,607万円という数字、これは単純に、「外注すればこれだけかかっていた作業を、自社で対応した」という記録です。

同じことをやっている経営者は全国に数多くいると思います。ただ、その作業を「利益」として算定・可視化した例が少ないため、やっている担当者や会社が経済的な価値として認識できていないことが多いのではないか——それがこの記事を書いた動機です。

一方でこの算定には限界もあります。自社対応に費やした時間(機会費用)は含んでいません。外注すれば専門家が短時間でこなす作業を、自社では試行錯誤を含めて時間がかかっているケースもあります。あくまで「回避できた外注費」の記録として参照してください。

この2,607万円はType A(初期の一回限りの節約)の記録です。DIY利益にはこれとは別に、毎年継続的に積み上がるType B、そして現場社員の技能を可視化・還元するType Cがあります。

記事③:毎年554万円、払わずに済んでいる話——サブスク回避利益という複利効果

記事④:社員の現場技能にも「DIY利益」がある——見えないスキルを可視化して還元する経営

※ 各金額は外部専門家・ITベンダーへの外注相場を根拠とした推計値です。自社対応に要した時間コストは含めておらず、純粋に「回避できた外注費」として算定しています。

※ ITシステム開発の算定単価はシステム開発会社の人月単価15,000円/hを基準としています。士業・専門家対応は社労士・行政書士への代行相場15,000円/hを基準としています。

※ データ入力費用はデータ入力代行業者の一般的な相場(50円/件)を基準に算定しています。

※「申請準備完了」の項目は、作業が完了している時点でDIY利益が発生しているため計上しています。認定結果に関わらず、外注相場に基づく費用回避の事実は変わりません。

※ 本記事の数字はDX認定・DXセレクション申請における「デジタルサービス全体の利益(DIY利益)」の根拠資料としても活用しています。