社員の現場技能にも「DIY利益」がある——見えないスキルを可視化して還元する経営
DIY利益シリーズ ④ 現場技能編

社員の現場技能にも「DIY利益」がある
——見えないスキルを可視化して還元する経営

IT・デジタルだけじゃない。現場に眠るDIY利益の話
記事②記事③ではIT・事務領域のDIY利益を紹介しました。しかし、DIY利益はデジタルの世界だけにあるわけではありません。現場で働く社員の個人技能にも、外注すれば費用が発生するはずだった価値が存在します。この記事では、それを「見える化」して社員に手当として還元する、という経営の話をします。

なぜ現場技能が見過ごされてきたのか

多くの会社で、こういう場面があります。

「ドライブレコーダーを付けてほしいんだけど、できる人いる?」——手を挙げた社員が自分でつけてしまう。「プレハブの床が腐ってきた」——詳しい社員が休日に資材を買ってきて直してしまう。鉄骨を立てて工場に部屋を作ってしまう。

こうした場面で業者に頼めば、数万円から数十万円の工事費が発生します。でも社員が自分でやってしまうと、その貢献が「当たり前のこと」として処理されてしまうことが多い。

DIY利益という概念で考えると、これは明確に「回避できた外注費」です。見えていないだけで、確実に会社に利益をもたらした行為です。


実際の事例と外注相場

弊社で社員が個人技能で対応した事例と、外注した場合の相場を示します。件数を正確に積算することは難しいため、ここでは1件あたりの外注相場の目安として参照してください。

🚗 ドライブレコーダーの取り付け 13,000〜18,000円/台

業務車両へのドライブレコーダー設置。配線処理・取付位置の調整・動作確認まで社員が対応。業務車両が複数台あるため、すべて業者依頼すれば相応の工賃が発生する。

算定根拠:民間自動車整備工場への持ち込み工賃相場13,000〜18,000円(出典:カーコンビニ倶楽部2025年)

🚧 車輪止めの設置 15,000〜30,000円/箇所

駐車場・車庫への車輪止め(タイヤストッパー)設置。アンカーボルトの穿孔・固定・水平調整まで自社対応。業者依頼の場合は出張費込みの工事費が発生する。

算定根拠:設備・外構工事業者への依頼相場(材工込み)15,000〜30,000円

🎨 施設・設備の塗装 50,000〜150,000円/回

事業所の外壁・設備・フェンス等の塗装を社員が対応。下地処理・養生・塗布・後片付けまで一貫して自社対応。塗装業者への外注では面積・材料により幅があるが、人件費・足場代が大半を占める。

算定根拠:塗装業者への外注相場(小規模塗装工事・足場不要)50,000〜150,000円

🏠 屋根の設置 100,000〜300,000円/件

駐車場・資材置き場等への簡易屋根(波板・ポリカ)の設置。骨組みの組み立て・屋根材の固定・防水処理まで社員が対応。外注の場合は材料費+施工費で相応の費用が発生する。

算定根拠:エクステリア・簡易屋根工事業者への外注相場(材工込み)100,000〜300,000円

🔧 プレハブ床の補強・張り替え 80,000〜200,000円/件

腐食したプレハブの床材をホームセンターで資材を調達し、社員が補強・張り替えまで対応。既存床材の撤去・下地補修・新材の施工まで一貫して自社対応。リフォーム業者への依頼では撤去費+材工費が必要。

算定根拠:床の張り替えリフォーム相場(6〜8畳・撤去含む)80,000〜200,000円(出典:ハピすむ・フローリング総合研究所)

💡 電球の自動点灯式への交換 5,000〜15,000円/箇所

社内照明を人感センサー・自動点灯式に交換。器具の選定・取り付け・動作確認まで社員が対応。電気工事士の資格が不要な範囲での交換作業を内製。電気工事業者に頼むと出張費+作業費が発生する。

算定根拠:照明器具交換の作業費相場(出張費込み)5,000〜15,000円/箇所

🏗️ 工場内への間仕切り部屋の構築(鉄骨) 200,000〜500,000円/件

工場の一角に鉄骨を立てて間仕切り部屋を構築。柱の設置・固定・壁材の取り付けまで社員が対応。業者依頼の場合は軽量鉄骨の間仕切り工事として材工一式で相応の費用が発生する。

算定根拠:工場内軽量鉄骨間仕切り工事の相場(材工込み・小規模)200,000〜500,000円


「見える化して還元する」という経営判断

重要なのは、こうした社員の貢献をどう扱うかです。

「社員がやってくれたから助かった」で終わらせると、社員の側では「自分の技能は会社に当たり前のように使われている」という感覚になります。それが積み重なると、貢献意欲が下がります。

弊社では2013年から、こうした現場技能による貢献について、外注すればかかっていた費用を参考に手当として社員に還元するという考え方を取り入れています。

「外注すればいくらかかったか」を算定して、その一部を手当として渡す。

これは単なる報酬の話ではありません。「あなたの技能には、これだけの経済的価値がある」と会社が明示する行為です。

社員が自分のスキルを誇りに思える職場は、採用にも、定着にも、士気にも影響します。

なぜこの発想が広まっていないのか

現場技能のDIY利益が見過ごされてきた理由は、IT領域と同じです。

「やってもらって当たり前」という発想が根強く、その貢献を外注相場と照らし合わせて価値を算定するという発想が、そもそも経営の文脈に存在していない。

しかし考えてみると、同じ作業を外注するかしないかで、会社のコスト構造は大きく変わります。その差額は確実に会社の利益になっている。ならば、その利益を生み出した社員に還元しようと考えました。

シリーズのまとめ:DIY利益の全体像

4回にわたるシリーズを通じて、DIY利益の3つの種類を見てきました。

DIY利益シリーズ 各記事のまとめ
記事① 概念編  DIY利益とは何か。Type A・B・Cの3種類の定義
記事② 初期開発費編(Type A)  22取り組み・回避できた外注費:約2,607万円
記事③ サブスク回避利益編(Type B)  年間約554万円・10年後には累計約8,100万円の差
記事④ 現場技能編(Type C)  社員の技能を可視化・手当として還元する経営哲学

どれか一つが特別に重要なわけではありません。3つが組み合わさったとき、「内製できる会社」は固定費が構造的に低く、社員の貢献が正当に評価される組織になるという、経営の形が見えてきます。

ぜひ自社のDIY利益を一度計算してみてください。Type A・B・Cのどれか一つでも算定してみるだけで、これまで見えていなかった会社の強みが数字になるはずです。

※ 各外注相場は2025〜2026年の市場データを参照した推計値です。地域・仕様・業者によって大きく異なります。

※ 電気工事士の資格が必要な作業については、有資格者または専門業者が対応しています。

※ 本記事における「手当還元」の具体的な金額・方法は各社の実情に合わせて設計してください。